かなり昔になりますが「そろそろウチでも動画をやらなきゃとは思うんだけど、いくらぐらい掛かるもんなのかねぇ?」とご相談いただいたことがありました。
前職から大変お世話になったクライアントで、小規模ながらも長年続けていらっしゃる釣具メーカーさん(仮にX社とします)です。
比較的安価で使い勝手のいいアイテムを作ることから、爆発的な大ヒット商品というよりは「いつでも買えて、いつでも使える身近なメーカー」という立ち位置。
ご近所ということもあり「お食事でもしながら」と話を伺ったのですが、ご予算的にはかなり厳しい感じでした。
すでにYouTubeには各社のプロモーション動画が溢れており、1~2本作ったところで費用対効果としては期待が薄いところ。
仕事と割り切ってしまえばお受けできなくもなかったのですが、初めから成功確率の低い案件を推し進めるのは気が引けます…
「大変失礼とは存じながらも正直に申し上げます。当方で動画を作ると撮影に1日もしくは2日。できる限り時間を掛けない(費用を抑えて)編集をしても、それに3日ほどは使います。すると、どうしても1本あたり10万円ほど掛かってしまうんです」
(こういう時「いやー、絶対にやったほうがいいですよ!まずは予算内で2本やってみましょう!」からーの、やった後に「2本じゃちょっと少なかったですね。来年の予算から持ってきて、あと2本やりましょう!」でーの「せっかくやったのに、ここでやめるのはもったいない!他の予算削って、さらに…」とか言っちゃう食い潰し系営業は大嫌いです)
私も生活する上で、これ以上のディスカウントができない旨は、口に出さずともお気づきいただけたようでした。
X社が抱えるプロモーションスタッフが超有名人であったり、ブランド力がずば抜けていれば話は別ですが、販促に繋がるだけの再生数と話題性を得るには力不足であることも否めず、その件もお伝えしました。
ですが、長年の恩がある方なので、このまま無碍に断ることもできません。
予算はどう頑張っても20万円(もともとは10万円)。
この中でできるX社にとって最良のプロモーションは?
上にも書いたように、まず「他の予算を削って動画にまわす」という手段は真っ先に消去。
2本が3~4本に増えたところで、儲かるのは私だけ。プロモーション効果としてはたいして変わりませんし、X社を食い潰すだけ。
「撮影費・制作費のディスカウント」
もしこれをやっても、おなじく3~4本程度が限界。結果は同じです。誰も幸せにならない愚策。
「1回のロケで複数本分の撮影をまとめて行う」
却下です。そんなに簡単に釣れるワケもなく、商品の解説だけでユーザーを楽しませる(目を引ける)ことはできませんし、それだけのブランド力も残念ながら持ち合わせていません。
「動画をやらないで他のプロモーションを考える」
1つの手段としてはアリです。店頭プロモーションには強いメーカーなので、この予算をそちらに回せば、ある程度の効果が見込めます。(店頭イベントならユーザーが楽しめる要素もあります)
ただ、すでに飽和しかけている方法なので将来的には不安が残りますし、「そろそろ動画をやらなくては」と思ったキッカケも、これまでのプロモーションでは限界があると感じてのご相談であったはずなので、「やらない」という選択肢はありません。
重要な点をまとめてみます(失礼な表現が入りますがご了承を)
- いままで動画をやっていなかった→まずは始めることが大事
- ブランド力はそこまで高くない→動画にも、さほど高いクオリティは求められない(※)
- 店頭プロモーションには強い→密着型でユーザーには支持されている
- 取扱商品は比較的安価→動画もクオリティより物量の勝負ができる
そこで私がオススメしたのは以下の方法です。
「安いカメラで構わないので買ってください。おそらく何度かは壊れると思いますが、今回お考えの費用で数台買えるはずですので、そのつもりでいてください。
それをプロモーションスタッフに渡し、自撮りしてもらいましょう。
画質や音声など気にする必要はありません。それよりも物量で、とにかく本数を上げるようにするのが大切です。
編集も凝ったことはしないで大丈夫です。というより、する必要はありません。
釣れたシーンとルアーが見えて、せいぜい商品名を字幕で入れればOK!
編集ソフトもカメラについているオマケソフトや、フリーで使えるものでいいです」
イメージとしては「バシャバシャ、ドヤッ!ルアーはコレ。いま釣れてるよ!」で1~2分。
説明は…ほんとはなくてもいいのですが、手短に入れてもいいですね。
いまで言うYouTubeショートやインスタ動画みたいなイメージですね。
まだゴープロがそんなに普及していなかった時代でしたので(バッテリーの持ちも悪かった…)別のカメラをお求めになったと記憶しています。
残念ながら思っていたほど撮影がうまくできず、結果的に上手くいったとは言えない結果になってしまいましたが、その原因は私にもあります。
X社とプロモーションスタッフの関係に遠慮して、これを言えなかったことを…
プロモーションスタッフに仕事として「動画1本上げるごとに○○○円払うから、○○本を目安に撮ってくれ」と依頼すること!
カメラを買って余る予算の範囲内なので、せいぜい1本5,000円程度でしょう。
しかし、そこに明確な報酬があってこそ人は頑張れますし、義務感も生まれます。
たとえそれが1,000円でも10,000円でも、ランチプレートでもチョコレートパフェでも、報酬をいただいたら、それはお仕事です。
安い?高い?
10億円持ってる人からいただく1,000円と、1万円しか持ってない人からもらう1,000円。
ビジネスならおなじ1,000円ですが、私にとっては重みが違います。
そしてX社長はひと言。
「いいお話をありがとう!じゃあ、ここは割り勘で!」
なんてオチはありません(笑)
「いまのウチの予算では、これがいっぱいいっぱいです。今後、動画をやれるだけの予算ができたら、ぜひお願いできますか?」
これほど有り難いお言葉はありません。
先に書いたように、残念ながらこの企画自体はあまり成功したとは言えず、その後ご依頼をいただいてはおりませんが、また何かの機会があれば食事でもご一緒したいですね。
これだけは忘れずに
文章の途中に※がありましたね。
- ブランド力はそこまで高くない→動画にも、さほど高いクオリティは求められない
の部分です。
これと同じプロモーションを高価格帯のアイテムや、ある程度のブランド力があるメーカーがやったら企業価値を落とします。
PV(動画の再生数)=売れる(もしくはブランド力が上がる)わけではありません。
「なんか○○社、最近安っぽいよね」とブランド価値を落とすことにもなりかねますので、自社のアイテム価格帯とブランド価値、購買ユーザー層などを考えずにおなじことをしないほうがいいと思いますよ。
知らんけど、知らんけど、知らんけど(ここは無責任)
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